サラリーマン時代に円形脱毛症になって凹んだこと

日常

10年ほど前のことだが会社での様々なストレスが原因で円形脱毛症になった。
当時会社でややこしい業務上の重責を負い、それに伴う上司他との人間関係からくる精神的苦痛やらプレッシャーを相当抱えていたと思う。聞くところによると、円形脱毛症はストレスにさらされている最中よりもストレスから解放されてふと気が緩んだ頃になることが多いそうだ。

円形脱毛を最初に発見したのは妻だった。ある日妻と買い物に出掛けた先で、下りのエスカレーターで私のすぐ後方に立った妻が、
「あれ、後頭部のここのこんなに薄かったっけ?」と私の後頭部を指して言ったのだった。
「えっ」慌てて妻に手を誘導してもらい指先でその箇所に触れてみると、確かに本来毛髪があるはずのあたりの地肌に指がぺたりと直接触れる。家に帰って急いで合わせ鏡で確認すると半径1.5㎝くらいの円形状に脱毛ができていた。ショックだった。

急いでWebサイトで色々調べたのだが、きちんと治療をすればよほど重症でない限り完治自体はするらしいことがわかった。完治までの期間は、脱毛の箇所が単発(1個)の軽症であれば早ければ3ヶ月程度、複数箇所だと1年以上かかることがあるというのが概ねの情報だった。
自分は当初単発の軽症と思い込んでいたので「そうか3ヶ月か」と思い少し安心したのだが、なんと数日後に気になって後頭部を合わせ鏡で見ていたら、当初のちょうど左右反対側にもう1つ脱毛ができているのを発見してしまった。これは輪をかけてショックだった。治るまで1年以上もかかるの?
とにかく病院に行こう。

幸い脱毛の箇所が後頭部で、上から下りる髪でそれなりに隠れる箇所だったので人目をそれほど気にせずに済んだ。だが、その日以来どうにも色々なことに力が入らず、発覚の直後にあったバンドの練習でもピアノを弾く指にどうにも力が入らず演奏が上手くできなくて、バンマスから若干お叱りを受ける始末であった。

その後通勤途中にある皮膚科に行くと、初老のお医者さんが箇所を確認した後で何やらドライアイスのようなものを脱毛箇所に当てる治療をしてくださり塗り薬を処方された。
それにしてもすっかり気持ちの凹んでいた自分を救ってくれたのは、処方箋を持って行った薬局で見るからに穏やかそうな中年の女性薬剤師さんが
「必ず治るからね」
と強い目線と口調で言ってくださったことである。よほど私が不安そうな顔をしていたのかもしれない。本当に気持ちが救われた。

その後も月に1回程度お医者に通い、処方された薬を朝晩脱毛箇所に根気強く塗り続けること約2ヶ月経った頃だろうか、脱毛箇所に指で触れると、ツルツルの触感だった箇所にうっすらと短い産毛のようなものがほんのり触れるようになっていて嬉しかった。

それから約半年、脱毛箇所に密度こそ薄いものの細い毛が生え始め徐々に脱毛が目立たなくなり、1年が経つ頃には薬も塗らなくなって円形脱毛症のこと自体忘れてしまった。
治療中後からわかったのだが、脱毛箇所は大小合わせて全部で5箇所もできていた。

今私は退職して無職の気楽な身だが、現役時代円形脱毛症になるほど真剣に会社勤めをしたのだから、今は少々気楽な日々を送っても罰は当たるまいと思うのである。

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